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日の光がダラスラの町を照らし出すよりも少し早くに宿を出て、二人は地図に描かれている“ザンキサス遺跡”入り口前まで来ていた。
町を出て地図の示す通り進む事三時間、道も無いが、そう遠くは無かった。
そして今、二人の前にその入り口――と思われる、人一人通れる程の穴が、平原にぽっかりと口を開け、中へ階段が続いていた。
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「わ、やけに小っちゃいんだね!」
遺跡といえば荘重で重厚な石造りの門があり、柱や階段にも古の神々を想起させる様々なレリーフが刻まれていて、きっと目を回すくらいに大きいのだろう―― そう考えていたレイはしばし目を丸くしていたが、それでもやはり自分の目指した場所を目前にして、胸がどきどき高鳴った。
故郷を出てからずっと、このザンキサス遺跡の探索を夢見てきたのだから。
「初めての冒険らしい冒険だよ!」
後ろでアズ溜息が聞こえるのも気に止めず、レイは潔く穴に飛び込んで行こうとした。
だがアズがマントの裾を掴んだので、一歩踏み出してだけで、それ以上は進めなかった。
驚いて振り返ると、アズが訝るようにじっと穴の奥を見つめている。
「町の奴らはこの近くに遺跡があるってのはどうせ噂だけだと言ってたよな。俺は人の手が入っていないって事だと思ったが、そう町から離れてるわけでもないのに町の者がこんな穴を知らないのは不自然だ」
「なるほど、そうだよね。確かにこんな穴が空いていたら、近くを通りすがっただけでもすぐに発見できるよね」
アズの言葉が気になってレイは向き直る。
すると彼はマントから手を離したが、降ろさずにそのまま、胸の前で腕を組んだ。
「で、俺はまだ聞いていないし、この遺跡についてあんたから何も説明を受けていないんだが、ここに何があるんだ? それぐらい話しておくのが筋だと思うぞ」
「わ、ごめん、そうだったよね。私はそれを探りに来たんだよ、ここに何があるのかを探しに!」
説教でもするようなアズの少し威圧を含んだ口調に、レイは思わず慌てた。
「つまり何も知らないのか・・・・・・」
アズはこめかみを抑えつつ、質問を変える。
「じゃあ、その地図はどこで手に入れたんだ?」
すると、レイはアズ以外の誰に聞かれるわけでもないのに、少し声を小さくして答えた。
「実はね、旅に出るときこっそり家から持ってきちゃったんだよね」
「は? あんたの家に・・・・・・?」
「うん、父さんの部屋に置いてあったんだ」
照れたように笑って頭を掻くレイに、アズはこめかみを抑えた。
「まさか、あんたがどっかのお姫さん・・・・・ とかそんなミラクルはないよな。まさかな。 ・・・・・・というかもしそうだったら俺の存在は危うくなるな」
あるわけないという風に苦笑しつつも、それはアズにとってはなかなか恐ろしい考えだったらしく、語尾は小さくなっていく。
するとレイはまさか、と笑って顔の前で手をぶんぶん振った。
「普通の民家だよ。一般庶民だよ」
「だよな」
「でも、すっごい魔具とか、すっごい財宝があったらどうしようね? わくわくしちゃうね!」
するとアズは一度長い息を吐いた。
それから、屈んで穴の中を覗き見たり、違う角度からまた目を凝らしたりと、早く入りたくって仕方がないとばかりにはしゃぐレイに、ぴしゃりと言い放つ。
「民家のこっそり持ってこれるようなとこにあった地図にそんなすごいもんがあるわけないだろ」
その言葉で、レイは固まった。
確かにアズの言った通り、何があるか、どんな魔物がいるのかもわからない。
こっそり持ってきたから、父から話すら聞いていない。
何も・・・・・・ ないかもしれない。
頭ではわかっていたのだ。
だがなんとなく、きっと遺跡にはきっと驚くような発見や宝があって、冒険がぎっしりつまっている、そんな期待が既に膨れ上がっていたのだ。
そしてその気持ちこそが、レイの原動力だった。
だがそれを、最もだと納得できるような意見で否定され、急激にレイの表情はなくなっていく。
すると、まるで乾いた泥のように突付けば今にも崩れ落ちそうなレイに少しギョッとして、見かねたようにアズが口を開いた。
「まぁ、何もなくても足の運動位にはなるんじゃないか?」
「そうだよね・・・・・・ 脚力って、冒険者として大事だよね」
アズに励まされ、レイは自分に言い聞かせるように呟く。
だが、次第に顔は晴れ、やがて吹っ切れたように笑った。
「私、もうちょっと筋肉が欲しかったんだよね」
確かに、冒険者には大事なことだ。
だがもう一つ、レイは思ったのだ。
それに・・・・・・
やっぱりもしかしたらあるかもしれないよ、
この中に夢とロマン・・・・・!
そうそう期待は捨てきれない。
今だって、もともと一人で訪れるはずだったこの場所に、アズと共にいる。
可能性は常に未知数なのだから。
「よーし、とにかく入ってみよう、アズ!」
「おい、十分気をつけろよ」
再び勢いを取り戻して穴の中へ特攻して行くレイの背中には、やれやれと溜息混じりにも身を案じてくれている、頼もしい仲間の声が届けられた。
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