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「ベリング、ただいま!」 |
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レイとアズが報告へ来ると昨日同様ベリングは二人を笑って迎え、近づいたレイを爪先から頭の天辺まで一度見直した後、怪我がない事がわかると結果を聞くより先に身の無事を喜んでくれた。
「アズはしっかりレイをサポートしてくれたみたいだな! いや、良かった良かった」
アズはベリングに飛び切りの笑顔で肩を叩かれ感謝を述べられて、一太刀浴びせてからずっと倒れていたとは言い難いのだろう。ベリングの無意識の辱めに、アズは「うっ」と呻き、明後日の方向に目を送っていた。過度の魔法抵抗力の低さがレイの前で明らかになったときも彼は恥らうような素振りを見せていたし、それを自分の口から言わされるというのは酷というものである。
「そ、そうそうそれでね・・・・・・」
レイは二人に横槍をいれるような形で口を挟み、まずはジョーカーの討伐が無事完遂した事を伝えベリングを安心させると、フェリスが帰り道に話してくれたジョーカー及びデス・ストーカー達の生態系について、覚えていられただけほぼそのままに説明した。次のような内容である。
まずはベリングも知っていることであろうが、そこら中にいる名前に冠しないデス・ストーカーの中から戦闘素質に優れたものがクイーンになり、その中で更に選りすぐられた一匹が、キングと呼ばれる雄のデスストーカーへと性転換をする。キング・デス・ストーカーは山の中に常に一匹のみ存在し、基本的に戦闘は行わず、子孫繁栄のため生殖に励むのが仕事のようなものであり、それがより優れた遺伝子を残していくためのデス・ストーカー達の手段なのだ。
「そりゃ知ってるぞ」
「うん、そうだよね。でも、ここからジョーカーの話になるんだ」
物足りなそうなベリングにレイは続けた。
稀に、性転換後のキングが今回のような三尾に三つ目のデス・ストーカーへと突然変異を遂げる事がある。ジョーカー・デス・ストーカーである。
ジョーカーへ変異する理由に関してまでは、正直なところ<生命の神秘>の一言に尽きるとも言え、エルフ族の知識を持ってしても言及出来ないというのが本音だが、しかし、ジョーカーへと変異したデス・ストーカーの好戦的で荒い気性と他デス・ストーカーよりも戦闘に優れた能力を備えている事から、見解としては、ダンジョンボスとしての覚醒的身体発達であるかもしれないと、フェリスは言っていた。
そもそもダンジョンとは、いわゆる魔物の生息する危険な領域や宝のある場所、迷宮またはそれに近い場所、遺跡等、広くを指すが、その中にはダンジョンボス通称“DB”と呼ばれる、言わばそのダンジョンにおける親玉が存在する事があるのである。
「生態系までは知らないし考えもしなかったけど、俺も三尾のデス・ストーカーの話を聞いた時にDBだろうと思ったよ」
これまでにも“DB”討伐をこなしてきたのであろうアズは、それで鉱夫の一人から三尾に三つ目と聞いて、きっと“DB”だと、そう思ったらしい。
「なるほど、DBか。ヘヴァにもいたか」
言われてみればそうだなぁ、とベリングは頷いた。ダンジョン内にて最も強く荒いジョーカー・デス・ストーカーの性質は、他の“DB”にも比較的見られやすい。
フェリスとはその後にも、“DB”という存在を、あるまた別の神が造ったのか環境が生み出したのかは分からないが、少なくとも、混沌の海しかなかったこの世界に光を造り出した星の誕生の頃から存在せし“光神ソレイア”が、自らを至高の存在と名乗ったその事が、区域におけるボス的存在の源流となっているかもしれないというのが、人間(広義での)達の考えである、という話があった。レイは興味深々にこの話を聞いていたのだが、フェリスはここからは専門外だからと締め切られてしまったし、レイがそれをも話そうか迷っていると、アズは「逸れるしいいだろう」と制止したので、ここで一通りベリングへの説明は終えられた・・・・・・と、思ったのだが。
アズが大事な事を忘れてると言って、少し付け加えた。
「ジョーカーが誕生すれば繁殖はより盛んになりクイーンの数も増えていくらしいから、それが今回クイーンが増えた原因な。余り被害がないからスルーしてた子サソリも多分前より増えてただろう。あとはノッカーだけど、ジョーカーの鳴き声が大の苦手で隠れてたらしい」
すると、先程までの話が少々難しかったのか、つられて難しくなっていたベリングの顔がぱぁっと晴れていく。
「そうか! じゃあジョーカーが倒れてノッカーは戻ったんだな!」
「あぁ、なんか歌まで歌ってたらしい」
アズがちらりと見たので、レイはウンウン頷いた。
すると二人を順に見て、ベリングは声を弾ませた。
「よっしゃあ! これで鉱山解禁だな! レイ、アズ、改めて礼を言う、ありがとうな!」
気合が入りすぎたのか裏返ったベリングの声を聞いて、そうだった、そこを最初に言うべきだったかな、とレイは少し反省し、ジョーカーを倒した事の実感が沸いてきたのはそれから少ししての事だった。勿論倒した事はとっくに理解していたが、ベリングの表情を見ているうちに、少しずつ体が心地良いような気だるい様な感覚に侵食されていき、ゆっくりしたいという気持ちが芽生えてきて、あぁ、終わったんだな、そうレイは思ったのであった。
「じゃあ、これにて一件落着だね!」
フェリスの様に穏やかで妖艶な、というわけではないが、嬉しい気持ちに穏やかな気持ちが混ざって、二つが混ざっているけれど曇りのない笑顔を浮かべて、レイはアズとベリングを順に見、そして最後に空を見上げた。
もう夜が来てる。あれは満月?
――じゃ、ないかな。少し欠けてるよね。けど、綺麗だな・・・・・・・
黄昏はいつの間に過ぎたのか、十六夜の月が宵の口のヘヴァの街を照らし始めていた。
――そろそろ父さんと母さんに、手紙、書こうかな・・・・・・
レイの見ているこの月はきっとフェリスも照らすだろう、それからリルトサートの村も。
「まだ笑ってるな、月見て」
アズがベリングに言った言葉は、月に見えぬ故郷を見た気がして思い馳せるレイの耳には入らなかった。が、ベリングがずいっとレイの目の前に顔を突き合わせたので、レイは急に我に返り素っ頓狂な声を上げた。
「わわ、ベリングが目の前で一杯!」
彼によって現実へと引き戻されるのはこれで2回目であったが、そうそう慣れる様な事ではない。レイは動転していた。
「落ち着け、逆だ」
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【 アトガキ 】
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書き上げて読み返していたら、「ブローチの中に調査隊を出しておくことを約束した」という可笑しな文章が出来ていて焦りました。
第12話お読み頂きありがとうございました!
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